日本人の「黒髪」と「地毛」へのこだわりは相当なもの。その地毛による黒髪の造形を芸術の域にまで高めたのが「日本髪」です。日本髪の原型ができたのは安土・桃山時代。その後、日本髪は最も華やかでバリエーション豊かな江戸時代を迎えました。こうした歴史を京都の視点から見ると、「日本髪は武家のもの」「江戸発信の髪型」という思いがあります。明治28年、平安奠都千百年記念祭のために復元された十二単に合わせる髪型は「おすべらかし(大垂髪)」と言って、安土・桃山時代以前の「垂髪」と同じく、髪を結わない系列に属しています。伝統のおすべらかしを作っているのが京都の美粧師。また一年に一度のイベントだけではなく、日常的に舞妓さんの京結を担っているのも京都の美粧師です。
江戸時代後期に最盛期を迎えた日本髪は、年齢や職業、地域や身分、未婚か既婚かによっても結う形が違っていて、ひと目見ればその女性のプロフィールがある程度分かったほどでした。今でも京都の美粧師の目から見れば、関東風と関西風の日本髪が存在しますし、髪型を見ただけで舞妓さんだと分かります。各髪型の違いは前髪の上げ方や鬢(びん:サイドの髪)の上げ方など、細かいニュアンス。ですから、現代の京都の花嫁を作る美粧師は、時代祭の衣裳を手掛ける美粧師とは違い、旧来の日本髪にこだわりすぎない「新日本髪」を目指しています。新日本髪とは、決まった形があるわけではなく、花嫁さん一人ひとりの顔の形や首とのつながりなどを十分考慮して仕上げるオーダーメイドの髪型を差しています。
京都の結婚式で着られる和装も一時期、大きく洋に寄ったことがありました。西陣織を使ったドレスや洋風の着こなしなどがそれです。しかし今、和装を選ぶ花嫁は家族とのつながりを大切にしています。母が選んだ場所だから、祖母が着ていた振り袖だから、といった具合に。「日本にもともとあったものだから」と伝統や本質を大切にする京都の精神に通じています。
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